トルコのエディルネから、国境を越えてブルガリアのプロヴディフへ――。この人気の陸路ルートにバックパッカーや個人旅行者が挑む際、絶対に知っておくべき重大な鉄則があります。それは、主要ルートであるカプクレ(Kapıkule)国境検問所は「完全な車両専用国境」であり、徒歩での横断が一切禁止されているということです。
私たちは2023年夏のヨーロッパ旅の途中、前夜のホテルのWi-Fiトラブルによってこの事実を知らないまま、バックパックを背負って無防備にも「徒歩」で国境へと向かってしまいました。案の定、銃を持った国境警備員に足止めされ、絶体絶命のピンチに……。
この記事では、私たちが実際に体験したカプクレ国境でのリアルなトラブルの一部始終をベースに、エディルネ市内からのローカルミニバス(ドルムシュ)の乗り方、国境を突破するための「ヒッチハイク」の具体的なコツや注意点を徹底解説します。ルールさえ知っていれば、その先には「ヨーロッパ最古の現役居住都市」と呼ばれる美しいプロヴディフの街があなたを待っています。まずは、私たちがハマった国境の罠と、そこからの脱出劇からご紹介します。
エディルネ発プロヴディフ行き国境越え:クイックサマリー
- 通過した国境検問所: カプクレ(トルコ側) / カピタン・アンドレーヴォ(ブルガリア側) ※EUの主要な表玄関
- 絶対ルール: 徒歩での国境通過は厳禁(一歩も入れません)。 パスポートコントロールを通過するには、必ず「車両の車内」にいる必要があります。
- 移動手段: エディルネ中心部から国境まではミニバス(ドルムシュ)で25 TL。ただし、ブルガリア側の国境を出ると公共交通機関は一切ありません。
- 私たちの解決策: トルコ側・ブルガリア側、両方のイミグレーション手前で車に載せてくれる親切な人を探す「国境ヒッチハイク」を敢行。
カプクレ国境検問所:バックパッカーを待ち受ける予想外の罠

今回のルートは、トルコの歴史ある国境の街エディルネを出発し、巨大なカプクレ(Kapıkule)国境検問所を抜けて、ブルガリアのプロヴディフへと向かう陸路移動です。トルコとEU(欧州連合)を結ぶ主要な陸路ゲートウェイであるカプクレは、常に交通量が多く、セキュリティも非常に厳しい国境として知られています。
私たちが国境に挑んだのは、夏休み最後の週末にあたる8月26日の土曜日。ヨーロッパへ戻る人々で大混雑することが予想されたため、エディルネのホテルをできるだけ早朝に出発することにしました。
しかし、ここで一つ大きな誤算がありました。前夜、ホテルのWi-Fiが完全にダウンしてしまったのです。ネットが使えず、事前のリサーチが不十分なまま出発せざるを得ませんでした。もし事前にGoogleで詳しく調べていれば、ひとつの重要な鉄則に気づけたはずでした。それは、「カプクレ国境は徒歩での横断が不可。完全な車両専用国境である」ということです。
そんな事実を露ほども知らない私たちは、バックパックを背負い、自信満々に「徒歩」で国境へと向かってしまいました。これが、今回の旅のなかでも特にドラマチックな1日の幕開けとなるとは知らずに。
ローカル交通機関の乗り方:エディルネ中心部から国境の最前線へ

アッソスから一気にエディルネまでやって来た翌日、カプクレ(Kapıkule)チェックポイントからブルガリアへ国境越えすることにしました。
エディルネの市街地からカプクレ国境検問所までは、約20km離れています。国境行きのミニバス(ドルムシュ)が頻発しているという情報は掴んでいましたが、正確な時刻表を事前に知ることは困難でした。
エディルネから国境行きミニバスの乗り場: 国境行きのミニバスは、エディルネを東西に貫く「アタテュルク通り(Atatürk Street)」から発着します。私たちは『Maps.me』アプリを頼りに、市バスターミナルの近く、クヴェイト・テュルク銀行(Kuveyt Türk)のすぐ前にある指定のバス停を見つけました。

バスを待つ間、すぐ隣の薬局の脇に出ていた小さな移動屋台で、焼きたての「シミット」(ゴマがたっぷりかかったトルコのドーナツ型のパン)をいくつか購入。午前7時40分、予定通りカプクレ行きのミニバスが到着しました。運賃は1人25 TL(トルコリラ)と格安。バスは順調に走り、わずか20分で国境検問所の目の前まで送り届けてくれました。
ゲート前での足止め:トルコ・パスポートコントロールでのヒッチハイク

ミニバスを降り、パスポートコントロール(出国審査)に向かって歩き始めた瞬間、私たちの旅は突如としてストップをかけられました。銃を持った国境警備員がすぐに遮るように立ちはだかり、首を横に振ったのです。「ここから先は車両のみだ。歩いて進むことはできない。」
目と鼻の先にパスポート審査のブースが見えているのに、そこまで歩いていくことすら法的に許されないのです。歩行者をシャトル輸送するような公共交通機関もないため、選択肢はひとつしかありませんでした。国境の入り口で、その場で車に載せてもらう「ヒッチハイク」をするしかありません。
車線は狭い通路のようになっており、そこを車がぎっしりと埋め尽くしています。私たちは通り過ぎる車一台一台に手を振り、この短い距離だけでも乗せてくれないかと頼み込みました。しかし、EU国境という非常に厳重な場所柄、どの車からも次々と拒絶されます。それも当然です。厳格な国際税関チェックを控えているときに、どこの馬の骨ともわからない外国人を車に乗せたい人などいません。
私たちは、後部座席まで子供たちで満席の「夏休み帰りのトルコ人ファミリーの車」を避け、車内にスペースがありそうな車に絞って交渉を続けました。するとついに、オーストリアナンバーの乗用車を運転していた親切なトルコ人男性が車を止めてくれたのです。「歩いて渡ることができないこと」、「数メートル先のパスポート審査ブースまで乗せてほしいだけ」と必死に説明すると、彼は鍵を開けて私たちを車内に迎え入れてくれました。

彼のおかげで、無事に車両専用レーンの出国審査ブースに到達。パスポートコントロールには複数の車両レーンがあります。私たち二人を乗せた運転手は比較的空いているレーンに車をつけました。数分で私たちの番になり、車にを下りてパスポートを審査官に提示しました。ブースについているカメラで写真を撮られ、出国スタンプが押されました。質問は無しでとてもスムーズでした。
税関での足止め:国境で試される忍耐強さ

パスポートコントロールのあとは税関を通りますが、ここでまた問題発生です。私たちに、ではなく、車に乗せてくれたトルコ人男性に、です。
税関も車ごと通ることになりますが、彼の所持品に問題があるのか、書類がきちんと用意できていなかったのか…。ともかく、書類を持って所定のセクションで手続きを行うことになり、税関路肩に車を停め、「10分くらいで戻ってくるから」と言い残し、彼は建物へと入って行きました。
10分くらい、と彼はいいましたが、30分たっても、1時間たっても、彼は戻ってきません。私たちがここで足止めを食う理由はないので、そのまま歩いてブルガリア側のイミグレーションに進んでもよいのですが、歩いて国境を越えた先に、バスやタクシーなどの交通手段があるのかどうかわかりません。せっかくヒッチハイクできて、あわよくばブルガリアのプロブディフまで乗せて行ってもらえたりするんじゃないか、なんて淡い期待を抱いていた矢先のことで、彼を置いてその場を離れるに離れがたい状況だったのです。
そんなふうにヤキモキしながら待っている間に1時間が過ぎたころ、やっと彼が建物から出てくるのが見えました。彼も、車の脇で待っている私たちに気がついたようで、手を挙げて見せました。ところが、彼は今度はパスポートコントロールの前を歩いて横切り、トルコ入国側の税関建物へ入って行ったのです。そしてそのまま待つこと、さらに30分。

その間に国境間にある免税店の入ったビルで、手元に残っていたトルコリラをブルガリアレフに両替したりしたのですが、さすがにもうこれ以上は待てないかな、と。後ろ髪を引かれる思いで、彼の車をあとにしました。
ブルガリア入国:人っ子一人いない荒野のフロンティアへ
免税店の入ったビルを通り過ぎ、歩いてブルガリアの国境へ向かいました。こちら側も当然車両専用のパスポートコントロールで、「歩いて来たのですか」とびっくりされながらも、ちゃんと入国スタンプは押してもらえました。
そしてパスポートコントロールの次の税関で、「プロブディフか最寄りの村まで行くミニバスはありますか」と聞いてみたところ、あっさり「ありません」といわれました。最寄りの街までは15kmほどあるようですが、交通手段はなくて歩いて行くしかないということなのです。
そうなると、再びヒッチハイクするしかありません。最悪の場合でも、そのうちにさっきの税関でトラブルになったトルコ人が税関から開放されて、私たちを乗っけてくれるんじゃないか、なんて冗談を交わしながら、乗せてくれる車を待ちました。
トルコとヨーロッパの間の国境ですから、ヨーロッパナンバーの車が続々と通り過ぎていきます。そんな中、停まってくれたのは、やっぱりトルコ人の運転手でした。

トルコ人男性のアリさんと、ブルガリア人女性リナさんの若いカップルです。アリさんは大手航空会社のパイロットで、2日前に成田から戻って来たばかりなのだそうです。

リナさんはいったん就職したものの、現在は大学院で金融学の修士課程を学習なのだそうで、経歴も若さもまぶしいお二人でした。
運命的な出会いと、プロヴディフ到着

なんども日本を訪問しているアリさんには、「日本人はやさしい」「寿司がおいしい」などと日本のことをべた褒めされまして、きっとこれも何かの縁だったんだな〜なんて、思いました。いえいえ、トルコの人のほうこそ、みんな親切ですよ〜などと話をしているうちにあっという間に時間がたち、途中でブルガリア式エスプレッソをごちそうになり、スナック菓子もお土産にもらったりしているうちに、目的地のプロブディフに到着しました。
そもそも彼らはプロブディフ市内に来る予定ではなく、その先の街へ行くつもりだったのです。でも私たちのためにわざわざ高速を下りて、プロブディフ市中心に近いところで下ろしてくれました。
今までの国境越えの中で、おそらく最もドラマチックで思い出深い体験でした。車に乗せてくれたお二人のトルコ人とブルガリア人女性のおかげで、無事ブルガリアに入国できました。
それにしても、トルコの国境を出る段になってまで、トルコ人の方々に助けられました。まったくもってトルコを離れるのが名残り惜しいですが、前に進まなくてはいけません。ブルガリア、ルーマニア経由でイギリス、カナダ帰国まで、あと一ヶ月です。
プロヴディフの観光計画はお済みですか?
トルコの方々のおかげでなんとかブルガリア入りできた私たち。プロヴディフでは、たっぷり観光を楽しもうと思っています。でも、その前に、ブルガリアでインターネット接続するためのSIMカードを購入しました。➡ 関連記事:ブルガリア・プロヴディフでSIMカードを購入!おすすめプラン、設定方法、ネット環境まとめ
さらに、私たちが徒歩で訪れたプロヴディフの観光スポットは別記事にて紹介しています。2000年前のローマ遺跡が現代の歩行者天国と見事に融合した不思議な街並みや、私たちが実際に歩いて見つけた見逃せないスポット、おすすめの徒歩観光ルートまで、現地で実際に泊まったコスパ抜群のゲストハウス情報と合わせてたっぷり盛り込んでいます。
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