タナトラジャには4泊しました。タナトラジャの観光と見どころ、アクティビティについて、2投稿に渡って紹介します。
タナトラジャについて
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タナトラジャとは、インドネシア、スラウェシ島中央にある山間エリアのことをさしていいます。その中には、ランテパオ(Rante Pao)、マカレ(Makale)、レモ(Lemo)などの街やその他小さな村々が点在しています。私たちは観光の中心である、ランテパオに宿泊しました。
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標高1000mの高地ですが、雨が多く、稲作が盛んです。山間に作られた棚田は観光見どころの一つとなっています。またコーヒー栽培も行われており、トラジャコーヒーとして出荷されます。
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もともとはベトナムに起源を持つといわれるトラジャ人が暮らしており、その暮らしぶりは独特です。村には、船、あるいは水牛の角の形に見える特殊な屋根を持つ家屋が林立します。
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中世、ヨーロッパ諸国がスラウェシ島への支配を強めた時代、タナトラジャはアクセス不便な山間部にあったため、1905年まで列強支配を受けずにいたことが、トラジャ人の文化風習温存の原因の一つかもしれません。宗教は、プロテスタント系教徒が多数を占めますが、イスラム教徒も暮らしています。
私たちはここに4泊し、ランテパオを拠点として観光地をめぐりました。
タナトラジャ観光案内所
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タナトラジャの街にはあちらこちらに「Tourist Information」の看板が出ていますが、行ってみるとゲストハウスだったり旅行代理店だったりします。公式の観光案内所は街の中心、メインストリート沿いにあります。
中にはホワイトボードがあって、タナトラジャのイベントが一覧表示されていました。トラジャ人の儀式の中でも特に葬式は非常に独特で、しかも観光客の訪問を歓迎してくれます。ですので、もし滞在中に葬式が行われるようであれば、ぜひ見学しに行ってみてください。
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一覧の最上欄にある「Rambu Solo」が葬式の意味になります。トラジャ人の葬式は通常3日間に渡って行われますが、私たちが観光案内所を訪れた翌日がその3日目にあたっていました。
観光案内所の職員はとてもフレンドリーで気さくな女性でしたが、やたらとツアーガイド(彼女自身のこと)を勧められました。葬式見学に行くにもツアーガイドがいないとどうにならないというふうに説明されます。ガイドを頼むとしたら一日(朝9時から夕方5時まで)500,000ルピアだそうです。バジェット派の私たちにとっては贅沢すぎる話なので、丁重にお断りしました。
伝統的葬式を見学
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ツアーガイドを頼む余裕はありませんが、トラジャ人の葬式は見てみたい私たち。イベントカレンダーに書かれていた住所を頼りに葬式見学へ出かけてみることにしました。
ホワイトボードには「Jl. Tilangnga(Tilangnga通り)」とあり、Googleマップで調べるとランテパオからレモ(Lemo)に行く途中にあるようです。こちらの人の葬儀はかなり盛大に行われるため、その通りまで行って近所の人に聞けば分かるだろうと期待して行くことにしたのです。
ランテパオからレモを経由してマカレまでの道はたくさんのシェアタクシーが運行しています。メインストリートの南行き車線の道端に立っているとすぐ拾えると思います。
シェアタクシーとしいっても、一見普通の自家用車に見えます。下の写真のような車が目の前でスピードを緩めたり、ライトをフラッシュしたら、それがそうですので、すかさず行き先までの値段を聞いて乗り込みましょう。
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レモ(Lemo)の街の手前の交差点まで乗り合いタクシーで一人7,000ルピアでした。ちなみに帰りはなぜか5,000ルピアで戻ることができました。
交差点で車を降りて、件の通りを歩き始めました。途中で見かけた近所の人に「Rambu Solo?」と聞くと「ここをまっすぐ行って田んぼを過ぎたところで右折」するようにいわれました。やはりみんな葬式のことは知っているようです。
そうやって何人かの人に聞きながら、葬式会場にたどり着くことができました。
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葬式会場には、タナトラジャ伝統的様式で建てられた屋根を持つ建物が中心に設置されています。すでにたくさんの人が来ており、周りに建てられた竹製のテラスに座っていました。みんな黒っぽい伝統的衣服を着ていて、私は黒服じゃなかったので少し気恥ずかしく感じました。
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奥の方では女性たちが忙しく料理を準備していました。中央には高い場所に棺が置かれており、その横でオーディオセッティングが行われていました。儀式はまだ始まっていないようです。参列者の多くがインドネシアの伝統的衣装を身に着けている中、一人だけスーツを着た人がいました。この人はきっと祭祀か喪主だろうと思い、クリスが少し話しかけてみました。
インドネシア語しか通じないのであまり多くのことはコミュニケーションできませんでしたが、私たちが葬式見学することに問題はないという印象でした。
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私たち以外にも外国人姿があって、本当に外国人見学者を歓迎してくれているのがわかります。ただやはり知らない人の葬式に参加するのは手持ち無沙汰な気がして、そろそろ帰ろうかと歩いていたところ、家族席にいた若い女性に声をかけられました。「上がりませんか」といわれたので、家族席にお邪魔。彼女は少しだけ英語が分かるので、英語とインドネシア語で会話しました。
少しすると料理が運ばれ、お昼ごはんになりました。いっしょに食べるように勧められたのですが、「私たちは手ぶらで来たので」と遠慮する(本来はお菓子などを持参するらしい)と、「いいのよ、いいのよ」といって食事をいただくことになりました。
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亡くなった方は彼女の義理の祖父にあたるそうですが、家族といっても悲しむ雰囲気ではなく楽しそうに歓談していました。「死」は悲しむものではないという独特の思想が、トラジャ人の間にはあるようです。
通常3日間に渡って行われる葬儀の最終日であるこの日、食事のあとに賛美歌やスピーチの時間が設けられました。
おそらく最も華やかなのは、生贄として水牛が屠殺される2日目なのでしょう。残念ながら私たちはその見学はできませんでしたが、トラジャ人の葬式に特別参加できたことが十分貴重な体験でした。
最終日の最後には棺を運び出す儀式が行われるはずですが、天候が荒れてきたため、私たちはその前に葬儀場をあとにしました。
クブランバトゥレモ洞窟墓地(Kuburan Batu Lemo)
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死にたいして特別な思想を持つトラジャ人は、その墓地も独特です。タナトラジャでは死者を土に埋めることはあまりしないそうです。その代わりに崖に掘って棺を収めたり、崖の高い場所に吊るしたりします。
絶壁を掘って作られた墓地も見どころの一つになっています。観光客によく知られている墓地にロンダ墓地がありますが、その南にあるクブラン墓地のほうが空いていてゆっくり見学できました。
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ランテパオの街からシェアタクシーに乗り、レモ(Lemo)で下車します。そこから東に歩くとクブランバトゥレモ(Kuburan Batu Lemo)があります。
入場料はインドネシア人の場合一人10,000ルピアで、外国人は20,000ルピアです。
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絶壁にすでにいくつかの棺が収められており、タウタウと呼ばれる人形が飾られています。
写真左側に竹製のはしごがありますが、このときちょうど新しい墓用の横穴を掘る作業が進行中でした。
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クブラン墓地は奥にも墓地セクションがあります。チケット売り場付近の土産物店が並ぶところを過ぎて田んぼのあぜ道を歩いて行きます。
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数軒の土産物店が並ぶ階段を上ったところに、別の絶壁墓地があります。
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タナトラジャの田舎道を歩く
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クブランバトゥレモからランテパオ近郊にあるケティケツまで、田舎道を歩いてみました。片道10kmほどあり、坂道が多いのでけっこうな時間がかかります。しかし、地元の人々の生活に根づいた伝統的建築トンコナンのある風景を楽しむことができました。
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一歩田舎道に入ると、田んぼや棚田が広がり、トラジャ独特の屋根が点在します。
タナトラジャの伝統的屋根を持つ建物は「トンコナン」と呼ばれています。居住空間を提供しますが部屋自体は狭いため、隣に別棟を建てて暮らす家庭が多いです。
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タナトラジャの伝統的建築は、「遺産」として受け継がれているのではなく、現在も生活の一部として息づいています。ほとんどの家にトンコナンふう建物があると言ってもいいくらい、空に向かって反り上がる屋根が林立しています。
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一軒に複数のトンコナンある家も少なくなく、高床の下の部分にはテラスを設えたり車庫としてスペース利用しているお宅もありました。
伝統的に、トンコナンの前には屠殺した水牛の角が飾られます。
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トンコナンよりも比較的小さめに作られているのが「アラン」という米蔵です。複数のアランを備えている家も多く、トンコナンと向い合せに建てられています。
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歩きながら写真を撮っていると、トンコナンはいつも同じ方角に向かって建てられていることに気づきます。通常、トンコナンは北向きにアランは南向きに建てられるのだそうです。トンコナンとアランが向い合せに複数建てられている景色はなかなか迫力がありました。
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タナトラジャの田舎道には水牛や鶏の他に鴨もいました。苗付け前の水田でスイスイ泳ぐ鴨を見かけました。
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これは田んぼの傍らにあったお墓です。小さな扉があり、カラフルに装飾されています。
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トンコナンアランは建築設計図無しに建てられるのだそうです。そのため、個別に若干の違いがあり、村によってもデザインが微妙に異なります。
ミニお昼ごはん休憩
クブランからケティケツまで歩く途中でお昼休憩をしました。この日は朝、ソッコ(Soko)という食べ物を買って持参していたのでそれをいただきました。
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紙やバナナの葉で包まれて販売されています。中には蒸したもち米が入っていて、購入するとココナッツフレークを加えてくれます。
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砂糖は添加されていなくて、ココナッツフレークのほのかな甘みがあるだけでした。サンバル(チリソース)がいっしょについてくるので、好みで加えて食べます。
ケティケツ(Ke’te’ Kesu)
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ランテパオから近く観光客にも人気のスポットがケティケツ村です。トンコナン伝統的建築と洞窟墓地など、トラジャ文化がコンパクトにまとまっているので、時間が限られる旅行者にとってサクッと観光しやすく便利な観光地です。
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ケティケツの入場料は、インドネシア人は一人15,000ルピア、外国人は30,000ルピアです。
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トンコナンを見学したあとは階段を上って洞窟墓地へ。
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階段を上った一番上には洞窟の入り口があります。洞窟に入るにはライトを持参しましょう。
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ランテパオの街中心からケティケツまでは、乗り合いミニバンが運行していますが、私たちは歩いてゲストハウスまで帰りました。
ちなみにこのケティケツ付近にはホームステイが点在しています。街の中心に出るには少し距離がありますが、午前中観光客が少ない時間帯にケティケツを見学したい人にとっては便利です。
ローカル焼酎を試飲
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ところで、葬式見学の際、一部参列者席に白い液体が入ったプラスチックタンクが運び込まれるのを見ました。明らかにアルコール飲料と思われましたが、あとで「バロ(Ballo)」と呼ばれるパーム酒だとわかります。
ケティケツからの帰り道で、「バロあります」看板を出している店があり、立ち寄ってみました。
話しかけると「チョバ(試してみる)?」と、コップに並々とパーム酒が注がれました。もちろん、よろこんで口をつけたのですが…
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…お世辞にも美味しいとは言いづらく、飲みきれないまま店主にお返ししました。酸味が強いのはいいとして、パームのアクなのか、クセがかなり強いです。飲み慣れればそれが病みつきになるのかもしれませんが、たぶん私たちにそんな日はやってこないでしょう。
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