アンコール遺跡観光のためシェムリアップにやってきました。アンコールワットは世界遺産にも登録されているので、多くの方がご存じでしょう。でも、アンコール時代の遺跡はアンコールワットだけではありません。アンコールワット周辺にたくさん点在しています。
アンコール遺跡を訪ねる際、チケットはアンコールワット周辺の遺跡群を含めたセットチケットになります。だからますますアンコールワットを見学しただけでシェムリアップを離れてしまうのはもったないない!
私たちは3日間有効のチケットを購入しましたが、初日にアンコールワットを見学した後、その近くにあるアンコールトムを訪ねました。
アンコールトムについて
アンコールトム (Angkor Thom) は、アンコールワットの北に位置する約3km四方のエリアです。アンコールワット寺院であるのに対して、アンコールトムは、高さ8mもあるラテライト製の城壁で囲まれた都市遺跡であり、その周りは幅100mの堀で囲まれています。最盛期には10万もの人口都市であったとされるアンコールトムの「トム(Thom)」は、「大きい」という意味を持っています。アンコール遺跡群として世界遺産に登録されていますが、アンコールトム自体が遺跡複合体となっており、複数の見どころがあります。
地図で見ると、アンコールワットよりもはるかに大きいことが一目瞭然です。ただ、アンコールワットのように敷地内をくまなく見学する必要はなく、点在する見どころを自転車で回るのは容易です。
アンコールトムの建築が開始されたのは1020年、スーリヤヴァルマン1世の時代です。その後、歴代王により継続されましたが、12世紀後期、ジャヤヴァルマン7世がアンコールワットからアンコールトムに首都を遷移して、最盛期を迎え、15世紀前半まで栄え続けました。
アンコールトムは城郭都市であり、南大門、北大門、西大門、死者の門、勝利の門の5つの城門が置かれています。東側に「勝利の門」「死者の門」という2つの門が置かれているのは、その機能が異なるためでした。
「勝利の門」は、戦いに勝ち凱旋する軍隊を迎えるためのもので、兵士はその先にある「象のテラス」で王の祝福を受けたのです。一方の「死者の門」は、命を落とした兵が通る道でした。その先のバイヨン寺院にて極楽浄土への祈りを受けたのです。
城門の塔には観世音菩薩の彫刻が彫られており印象的です。アンコール遺跡のイメージともいえる、この尊顔は、バイヨン寺院のそれと呼応しています。
それぞれの城門の外にはナーガがあつらえられた橋の欄干に、これを引く阿修羅像が並んでいて、迫力があります。交通量の多い南大門の阿修羅像は修復が進んでいますが、それ以外の城門ではオリジナルな状態に近い像群を見ることができます。
都市としてのアンコールトムはヒンドゥーの宇宙観をモチーフに設計されていると考えられており、中央に宇宙の中心であるメール山岳を象徴するバイヨン寺院が置かれています。
バイヨン寺院に垂直にそびえる塔の側面にある巨大な尊顔は「クメールの微笑み」と称されます。その他に象のテラスやライ王のテラスなどの見どころがあるので、じっくり時間をとって見学したいものです。
バイヨン寺院
アンコールトムの中心にあり、第一に見学したいのがバイヨン寺院です。私たちはシェムリアップに到着したその日、アンコールワットの次にこの寺院を訪問しました。
ジャヤヴァルマン7世の時代に築かれた山岳寺院です。ヒンドゥーの宇宙観を反映した設計で、世界の中心であるメール山を象徴しています。
数々の険しく隆起した山のように林立する塔には四面に巨大な人面像が彫られています。その大きさは2m前後もあり、観世菩薩像の微笑みであるという説が有力ですが、ジャヤーヴァルマン7世が神格化されているとする見方もあります。これらの尊顔は「クメールの微笑み」と呼ばれており、この寺院印象付けています。
バイヨン寺院は高さ約43mの本殿の周りを二重の回廊が囲っている構造ですが、それぞれの要素が密集しており、間にスペースはほぼありません。開放感がありじっくりと巡回させるアンコールワットに対して、いかにもそそりたつ山岳という雰囲気で、むしろ圧迫感すら感じさせられます。
東向きに建てられたこの寺院は、アンコールトムのほぼ中心にあり、十字道路に接続します。その配置は宇宙の中心であるメール山を象徴しています。この北西に王宮が置かれており、アンコールトムにおけるバイヨン寺院の重要度が伺えます。
バプーオン寺院(Baphuon Temple)
バプーオン(Baphuon)寺院は、バイヨン寺院の北西に位置しています。1060年頃、ウダヤーディチャヴァルマン2世によって、シヴァ神に捧げる寺院として建築されました。三層のピラミッド構造になっており、バプーオン様式とも分類されます。
この寺院も規模が大きく威風堂々としているので、ぜひ見学したいところです。
東西425m、南北125mにおよぶ砂岩の周壁に囲まれています。東塔門から伸びる長さ200m、高さ約1mの参道には途中に十字テラスがあり、参拝者を内側の塔門へといざないます。
寺院から参道を見返すと十字通路になっていることがよくわかります。
参道の脇には堀が造られており、水面にジャングルの緑が反映していました。
参道を渡り切ると迫力のある寺院の中央聖域にたどり着きます。山岳寺院とも称されるその姿は圧巻です。
ピラミッド部分の基盤は東西120m、南北100mにおよびます。三層構造になっており、それぞれに回廊が備えられています。本殿の中央祠堂は1基で、かつて50mの高さがあったといいます。
見学者用に木製の階段が設置されているので、この急な階段を上って中に入ることができます。
13世紀末、元の使節としてこの地を訪れた周達觀は「真臘風土記」において、この寺院には「銅塔一座(バプーオン)があり、バイヨン寺院塔(高さ45メートル)よりも更に高い」と記しています。「銅塔」と表現されているとことにより、当時は銅でしつらえていたとの考えもあります。
正門は東を向いているため、午前中のほうが逆光にならなくて、きれいな写真が撮れると思います。私たちはシェムリアップ2日目の朝に訪問しました。
第二層回廊へは、観光客のための階段が設置されていますが、かなり急です。年配の観光客の中には上るのをためらっている外国人もいました。
最上層のテラスには、主に点在する柱だけが残された状態になっていますが、ところどころ屋根が設置されている部分もあり、天井柱にレリーフがほどこされているのを確認できます。
最上層から見下ろした東大門です。
一番上のテラスは開放感があり、ぐるっと歩き回ることができます。残念ながら、現在中央祠堂に上ることはできません。しかし、蓮の花を備える参拝者もいて、今でも信仰が息づいているのを感じさせられました。
中央本殿はそれこそ山の頂きのような雰囲気です。扉のフレームのようなものが残されているので本来は他のアンコール寺院と同じく、塔型の祠堂が置かれていたのかもしれません。
ピミアナカス寺院(Phimeanakes Temple)
三層ピラミッドとして建てられたヒンズー寺院で、バープオン寺院の北にあります。10世紀末、ラジェンドラヴァルマンの時代(941年から968年)に建設され、その後スールヤヴァルマン1世によって完成しました。ピラミッドの頂上には塔があり、最上層には回廊があります。
寺院の周りを歩き回ることはできますが、ピラミッドに上ることはできませんでした。バープオン見学のあと、象のテラスへ向かう途中にあります。中には入れませんが外観が美しいので写真撮影しておきたいスポットです。
貯水池(Sras Srei)
バープオンから象のテラスへ向かう途中にあります。長方形の大きな貯水池で、トルコのローマ古代都市遺跡で見たプールを思い出しました。
象のテラス(Terrace of the Elephants)
高さ約3m、全長約300mのテラスで、その壁面にある象のレリーフにちなんで「象のテラス」と呼ばれるようになりました。
12世紀末にジャヤーヴァルマン7世(在位1181-1220年)によって建てられました。象のテラスから西道は、勝利の門へと続いています。このテラスで、王が戦いに出発する軍を見送り、凱旋した兵士たちを迎えたのです。
現在残されている部分は、本来の建築物の基壇にしかすぎません。その他の部分のほとんどが有機素材で造られていたため消失してしまっています。
巨大な閲兵席として機能していた象のテラスは、上部に蛇神ナーガの欄干が伸び、中央部と両端にバルコニーが設えられています。階段の左右には象をモチーフにした装飾がほどこされています。
横壁にはガルーダのレリーフ、クメールの象使いによるゾウの行進のレリーフが彫られています。
癩王のテラス(Preah Ponlea Sdach Komlong:Terrace Of The Leper King)
象のテラスの北側にあるのが癩王のテラスです。
ジャヤヴァルマン7世の時代にバイヨン様式で建てられました。「癩王のテラス」という名称については諸説ありますが、この遺跡より見つかった像に由来するといわれています。
見どころは壁に鮮やか彫られた立体的なレリーフです。デバター像や阿修羅像がびっしりと一面に彫られています。
テラス頂上には仏像が置かれていますが、特に見どころはありません。
その他のアンコール遺跡観光
私たちは今回シェムリアップに3泊し、サイクリングでアンコール遺跡を巡りました。一日目にアンコールワットと本投稿のアンコールトム内バイヨン寺院を見学しています。
バプーオン寺院からは2日目の見学ルートになります。シェムリアップ2日目は引き続き、アンコールワット、アンコールトム以外のアンコール遺跡観光を行っています。続きは、アンコール遺跡:二日目の記事でお楽しみください。
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